帰宅するとテーブルの上に手紙が置いてあった。
『津久居賢太郎様
12月29日0時 ネヴァジスタで待ってます』
いつかの日に似たような手紙を貰ったことがある。その時は手紙を貰ってから2ヶ月ほど家に帰れなくなった。
寒々とした部屋のなかで携帯を開くと12月28日19:48の文字。
レンタルビデオの有無や冷蔵庫の中身を確認したのち、俺は数分前にいた駐輪場へと引き返した。

「―――どういうことだ。」
0時ぴったりに清史郎の部屋を訪れると、なぜか弟と一緒に同僚の姿があった。
「清史郎君にほだされまして。」
「えへへー、びっくりした?びっくりした?」
褒めてほしそうな犬のように清史郎が尋ねる。
「とりあえず、あんなギリギリの時間に手紙をよこすな。心臓に悪い。」
「だってビックリさせたかったし。」
「ビックリしすぎてあの時のトラウマが軽く蘇ったぞ…。」
「勝手にトラウマになったの兄ちゃんじゃん。今回の手紙も解読できなかったらどうしようかと。」
「……」
「でも兄ちゃんなら間に合うって思ってた!」
「…ここに来るまでに3回は事故りかけたが。」
「まぁお二人とも落ち着いて。今日は記念になる日でしょう。」
ニコニコと薄ら寒い笑みを浮かべている男を見上げた。今日仕事で話したときは何も言わなかったくせに、さも当然のようにそこに座っている。
「そうだ、なんでお前がいる。」
「お二人の記念日作りに。」
「記念?」
石野は自前のコンパクトカメラを見せ、これまたいつもの笑みで言った。
「家族写真ですよ。清史郎君にどうしてもと言われてね。」
「兄ちゃんと二人でちゃんと撮ったことないだろ?だから撮ってもらお!いっぱい!」
「写真…」
両親が離婚してから清史郎とも距離をつくった。だから、二人で写っている写真は案外少ない。
特に清史郎は親からの関心が薄かったせいもあって、幼少期の写真は数えるほどしかない。
「――それならそうと言えよ。もっとキメてきてやったのに。」
「兄ちゃんはいつでもかっこいいよ。」
「津久居君はそのままで十分イケてます。」
人をおだてるのが上手いやつらだ。
「だが、なんでわざわざこの部屋なんだ。」
「俺と兄ちゃんの思い出の場所ってどこかなーって考えたらここになった。」
「…もっと他にあるだろ?」
「十年ぶりに再会した場所だし。」
「では、そろそろ撮りますよ。お二人とも並んで並んで。」
清史郎は俺の隣にぴったりと寄り添いダブルピースをした。いかにも高校生らしいそのポーズに思わず頬が緩む。
「そのまま何枚か撮りますが、ポーズは好きにされて結構ですよ。」
「わーい!どうしようどうしよう、次どうする?中国雑技団する?」
「そんな芸当はできない。」
「じゃあ肩車!」
「お前が俺を担げたら考えてやる。」
清史郎が提案するものを次々と切り捨てながら、結局はありきたりなポーズになること数回。石野が思い出したように口を開く。
「あぁ、そういえばオプションで色々と持ってきてたのを忘れてました。見ます?」
小さいカメラ一つにしては荷物が多いと思ったら。胸に嫌な予感を感じつつ、清史郎は見るー!とおおはしゃぎで荷物をあさり始めた。
「首輪…。ロウソク…。鞭……。なにこれ、ボールにベルトみたいのが付いてる。」
「…お前は家族写真をなんだと思ってる!?」
「おや、君たちはそういうものが好みなのかと。」
こいつ、絶対楽しんでやがる。タダで撮影することの代償のつもりだろうか。
首輪や手枷が成人男性用なのも見逃さなかったぞ。
「兄ちゃんお馬さんごっこでもする?」
「おい。そんなものを持つんじゃない。」
弟の手から鞭を取り上げる。これ以上、高校生とSMグッズを親しませてはいけない。
「どんなにアブノーマルでも秀麗に仕上げますのに。」
「プロの技量をそんなのに使うなよ。」
それから、なんだかんだと喚きながら何枚もの写真を撮った。
2時を過ぎたころに清史郎が騒ぎ疲れて眠ったため、そこで撮影会は終了した。
カメラマンは、今度撮るときはちゃんとしたスタジオで撮りましょうねと言い残して帰っていった。あいつはカメラの腕前以外、信用してはいけないのかもしれない。

後日、清史郎が俺の家に押しかけてきた。
その日から俺の部屋には、一枚の家族写真が飾られている。




図書室のネヴァジスタ3周年おめでとうございます!!
3年といったら、高校入学してもう卒業してる年数なんですね!
タースさんが定期的にネヴァジスタ関連の更新をしてくださっていて、
本当に製作者さんにも、もちろんファンのみなさんにも
愛されているんだなぁと実感いたします。
これからも 愛しているよ ネヴァジスタ(五・七・五)


◆ 名前:ある
◆ @arukuma_0129
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