これは、夢だ。
周りの景色ははっきりとしていなくて、何の音も聞こえなくて。
そして。瞠くんが、笑顔で俺に手を差し伸べている。
「誠二、」
瞠くんが口を開いた。
さっきまで無音だった空間に、瞠くんの声だけが響いている。
何、と尋ねようとしたけれど、何故だか俺は声が出せなかった。
「俺と一緒に行こう、せいちゃん」
どうして、とか嫌だよ、と言おうとしても、やはり俺の声は出ない。
そうしているうちに、腕を掴まれてしまった。
抵抗しようとしても、ずっと強い力で引かれる。
 素直になれよ。
そんな声が聞こえた気がして、振り向いても誰もいない。
「誠二?」
じれったそうに名前を呼ぶ瞠くんに、今度こそ返事をしようとした。

「…なに、今の夢」
キリの悪いところで目が覚めて、なんだか気分が悪い。
俺は、瞠くんに何と答えようとしたのだろう。
…考えても詮のないことだ。
昨日も遅くまで槙原先生に付き合わされた上、早朝に相談に来た信者さんの話を聞いていた。
その後ようやく、半端な時間に眠りについたから、だから…あんなおかしな夢を見たのだ。
夕飯の支度でもするか、と起き上がろうとしたところで、控えめに部屋のドアがノックされた。
「…はい?」
開いたドアから顔を覗かせたのは、―偶然なのか何なのか―先ほどの夢に出てきたその人、だった。
「久しぶり、せいちゃん」
「みはるくん…?」
少し背が伸びて、声も低くなった気がする。
いくらか大人びた顔に、にこにこと笑みを浮かべている。
笑った顔なんて、もう何年ぶりだろう。少なくとも最後に会った時よりずっと前から、瞠くんが俺の前で笑うことはなかった。
「ははっ、何ぼーっとしてんだよ!昨日もマッキーに付き合わされてたんだろ?」
「大人になったね、瞠くん」
質問に答えるよりも先に、受けた印象が口をついて出てしまう。
お世辞でも何でもなく素直な気持ちで言ったことを、瞠くんはやはり正確に感じ取ったらしく、照れたように笑ってみせた。
「話噛み合ってねえし…!やっぱり寝ぼけてんだろ?」
ごまかすように言っているけれど、ほんのり赤くなった頬と緩んだ口元は全く隠せていない。
彼と一緒にいて、こんなに穏やかな気持ちになれたことがあっただろうか。
けれどもきっと、心地の良い時間はそう長くは続かないのだろう。
「それで、一体何の用なの?」
突然終わるのが恐ろしくて、自分からこの時間を壊そうとした。
「ああ、そうだ。今日さ、幽霊棟で皆でパーティーやるんだ。誠二も来なよ」
「…パーティー?」
「そ!一日遅れのクリスマスパーティー、兼、忘年会!」
雑すぎる、と呆れて溜息を吐きそうになる。
「しょうがないだろ、皆なかなか予定合わないんだから!」
俺の心を察したように瞠くんが慌てて言い訳をする。
まあ実際、皆忙しくてなかなか揃う機会もないのだろう。
「せっかく皆で会えるんだから、君たちだけで楽しんだら」
そこに俺が混ざる理由も、資格もない。
そう思って手を振ろうとしたら、その手を掴まれてしまった。
「俺と一緒に行こう、誠二。みんな待ってる」
これは、夢じゃない。
けれど、瞠くんが俺に笑いかけて、手を引いている。
嫌だよと、答える気にはならなかった。
委ねてみてもいいのかもしれない。
幼さ故に俺を闇に引きずり込んだその手で、今度は光の元へと引っ張ってくれるのだろうか。
期待してみても、いいのかもしれない。

いつだって一番傍にいた君に手を引かれ、俺は光へと一歩を踏み出した。




ネヴァジスタ3周年、おめでとうございます…!
私がプレイしてからはまだ1年も経っていませんが、3年後もきっとネヴァジスタが好きなんだろうなって思います。ネヴァに出会えて良かった!
読み返すと恥ずかしさに埋まりたくなりそうなので読み返さずに提出します。色々と捏造な感じでごめんなさい。
これからも全力で応援して参ります!


◆ 心愛
◆ @xcocoaxtk



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